一次請けSIerとは、大手のクライアントから案件を請け、主に開発業務のマネジメントをする会社を指します。具体的な企業には、NRIやNTTデータ、SCSKやCTCなどが挙げられます。
知名度も高く待遇も良い一次請けSIerですが、実はキャリアの不安から転職エージェントへのキャリア相談をする20代SEの数も増えています。
この記事では、一次請けSIerの20代SEに向けて、具体的なキャリアアップの選択肢や一次請けSIer出身の人材が転職市場でどのように評価されるのかについて、当社(コープラス)トップコンサルタント新井への取材を元に解説します。
<新井の略歴>
アメリカの大学を卒業後、IT系ベンチャー企業にて経験を積み、人材採用のトータルソリューションカンパニーの人材紹介部門に転職。トップコンサルタントになり、コープラス創業メンバーとして参画。
ビズリーチ「JAPAN HEADHUNTER AWARDS 2022」にてIT・インターネット部門のMVPを受賞しました。
また、全エージェント中、決定率、紹介決定者数、転職決定者数が【No.1】ということでリクルート社から表彰を受ける。
〈この記事を読んでほしい人〉
- 20代~30代で一次請けの大手SIerに勤めている20代SE
- SIerにお勤めの20代SEでこれからのキャリアパスに不安がある
- 小規模のPJのPL・PM経験がありこれから転職活動を始めようと考えている
〈この記事のポイント〉
- 一次請けSIerの20代SEが転職市場での差別化するには働き方
- 求める働き方によってSIerからのキャリアアップ方向は異なる
- 一次請けSIerの20代SEで給料が上がる転職先は限られる
一次請けSIer出身20代SEのキャリアパスと転職先の選び方
一次請けのSIer出身者は、学歴だけではなくプロジェクトの上流工程経験、クライアント折衝経験など開発全体に関わる経験を積みやすいことから、様々なキャリアパスが考えられます。ここからは、その中でもSIerでのSE経験を生かしやすいキャリアパスの例を紹介します。
【キャリア重視】外資系ITコンサル
外資系ITコンサルとは、Big4(Pwc,EY,KPMG,デロイトトーマツ)やアクセンチュアなどに代表されるコンサルファームです。
外資系ITコンサルの業務は、「何を解決する必要があるか」といった課題特定や「そもそも何を作るか」などの戦略策定です。この点は、一次請けSIerなどの「決められたものをいかに期日通りに高品質の開発をするか」といった開発マネジメントや要件定義とは異なる業務です。
一次請けSIer在籍の20代SEが、外資系コンサルに転職するメリットは、その後のキャリアアップに繋げやすい点です。システム開発をマネジメントするだけではなく、戦略策定や企画構築などから関わることができるため、課題発掘やソリューション構築など最上流の工程に関わることができ、20代であればその後の転職先に困ることはほとんどありません。
ただ、外資系ITコンサルはクライアントやメンバーのレベルも高く、ハイレベルのアウトプットが求められます。もちろんその分給与面はいいですが、残業も多くプレッシャーも大きいです。
〈新井の一言〉
一次請けのSIer在籍の20代SEが外資系コンサルに転職する際に重要視されるのが、主体性です。プロジェクトの上流工程に関われるといっても、20代のうちはあまり責任のある業務は担当しにくいのも実情です。そのため、一次請けSIerでは20代時代にプロジェクトに主体性を持てる人はそこまで多くありません。
しかし、外資系コンサルでは、自分でPJを推進する主体性や自分の仮説をぶつける場面が必ず出てきます。外資系コンサルに転職するためには、仕事の中で主体性を持って行動したエピソードがなければ、内定は難しいでしょう。
【年収や待遇重視】日系ITコンサル
日系ITコンサルとは、アビームコンサルティングやベイカレント、ビジョンなどに代表される日本に本社を持つコンサルファームです。
日系ITコンサルの業務も、外資系ITコンサル同様に課題特定や戦略策定などがありますが、日系ITコンサルの場合は開発のマネジメントまで関わることも珍しくありません。
この点は、一次請けSIerでの開発マネジメントや要件定義を生かしやすいキャリアパスです。
一次請けSIer在籍の20代SEが、日系コンサルに転職するメリットは、「年収」と「教育体制が充実している」という2点です。
実は、日系ITコンサルでは、人材不足が経営課題となるほど深刻化しています。そのため、コンサル未経験者であっても、高い年収でオファーをかけて採用することが珍しくありません。近年は特にその傾向が高いです。
日系コンサルは未経験者採用することが前提となっている分、教育体制が整っています。コンサル未経験で採用後も、PMやPLなどの開発業務から経験を積みコンサルとしてアサインする、ステップを踏んだ成長をしやすいのが特徴です。
〈新井の一言〉
日系ITコンサルでは、一次請けSIer出身の20代SEは非常に魅力的な人材として認識されています。上流工程の要件定義経験やITへの理解もあるため、コンサルへの教育がしやすいからです。
もちろん、外資系コンサル同様、主体性や能力も求められますが、一次請けSIerの20代SEなら比較的転職は難しくありません。コンサルとして働いてみたいけど、外資でやっていけるか不安という転職者には、勧めることが多いキャリアパスの一つです。
【事業経験重視】事業会社の社内SE
事業会社とは、コンサルやSIerなどのクライアントワークではなく自社でプロダクトを持っている企業を指します。国内であれば、リクルートや楽天、ファーストリテイリングなど様々な企業が挙げられます。
事業会社の社内SEへの転職メリットは事業経験を積みやすい点です。事業会社では「そもそもユーザのためになるか」「事業利益につながるか」などの視点が求められます。これは、開発をスムーズに進めることが優先事項となるSIerとは大きく異なる点です。
開発経験だけではなく、マーケティングや営業など様々な職種と連携して事業を拡大するため、幅広い知見を身につけることができます。
〈新井の一言〉
事業会社といっても様々な会社がありますが、注意すべきは転職先企業の業務内容です。すでにプロダクトが成熟している場合、保守業務が中心となるためスキルアップが難しくなります。
企業によっては、年収を下げて転職したにもかかわらず、キャリアパスを狭めてしまう結果になることもあります。新規事業への投資規模や企業の成長フェーズを見た上で、転職するかどうかの判断が必須です。
【経験値重視】IT系Webエンジニア
IT系Webエンジニアは、より新技術やテクノロジーを活用して開発を進める業務になります。
一次請けSIerとIT系Webエンジニアの大きな違いとしては扱う技術の先進性になります。実は、一次請けSIerではプロジェクト規模が大きいこともあり、新技術よりもすでに確立された技術での開発が選ばれる傾向にあります。そのため、新技術のキャッチアップや活用経験を積みにくい場合があります。
IT系のWebエンジニアに転職するメリットは、より最新の技術を使った開発経験を得やすい点です。ただ、マネジメント職というよりも技術職に近くなるため、スキルアップや独学での情報収集が好きな人でないと、活躍が難しいキャリアでもあります。
〈新井の一言〉
一次請けSIerはプロジェクト全体のマネジメントや進行管理が主な業務内容となります。そのため、20代SEであっても豊富な開発経験を積むことは意外と難しいのが実情です。
実際に開発自体はパートナー企業に任せることもあり、新技術への理解や活用は遅くなりがちです。そのため、情報感度の高い20代SEには少し窮屈に感じるかもしれません。
【開発力重視】二次請けSIer
二次請けSIerとは、一次請けSIerから開発業務を引き請けより開発現場に近い企業を指します。直接のクライアントが一次請けSIerとなり、主な業務は開発の実務や現場マネジメントなどです。
二次請けSIerの転職メリットは、開発力や現場マネジメント経験が積みやすい点です。より開発実務に近いため、PM/PLとしてのスキルアップを図りたい場合や、自身のエンジニアとしての開発スキルを高めたい場合には絶好のキャリアパスといえます。
〈新井の一言〉
一次請けSIerの1年目から3年目あたりは、SEやプロジェクトメンバーとして働きます。
1次請けSIerでは、入社8年目~10年目あたりまでPL・PMを経験していない20代SEも多いです。
より早く現場で実務経験を積み、スキルアップやキャリアアップを図りたい場合、二次請けSIerが向いている場合もあります。
一次請けSIer出身20代SEの転職時によくするアドバイス
一次請けSIerの20代SEには様々なキャリアパスがあることを紹介しました。
最後に一次請けSIerの20代SEが「転職市場でどのように評価されるのか」や、「内定を勝ち取るために選考ではどのような対策が必要なのか」を多くの転職サポートやキャリア支援をしている新井にアドバイスとポイントを聞いてみました。
主体性こそが差別化につながる
一次請けSIerは基本的に年次によって役職が上がります。そのため、20代時代には上長の指示通りに動くことや、すでに稼働しているプロジェクトのサポート業務などが多いです。
ある程度確立している開発進行を担当することも多いため、実は転職市場において20代SEが業務経験を武器に差別化するのは難しいといえます。
自分の望むキャリアパスを獲得するためには、主体性を持ってどのような行動をしたのかということをアピールすることが必要です。
〈新井の一言〉
過去、一次請けSIer出身者の中で高く評価される人の中には、早い年次でPMPなどの資格を取得している人や、上司を巻き込みながらクライアント側やコンサル側の業務範囲を巻き取ろうと試みた人がいます。
ただ、一次請けのSIerの多くは人事評価が年功序列です。そのため、積極的な提案をしたり、プロジェクトへ主体的に関わったとしても直接的な評価に繋がりにくい傾向もあります。
より幅広い業務や違った活躍の場を持ちたい人には、一度転職エージェントへのご相談をお待ちしています。
動機には具体的な自分のエピソードを含める
基本的に、転職の選考の場では、特別な質問ではなく志望動機やキャリアの方向性など基本的なことが聞かれます。
そして、それぞれの質問に対して、動機の深掘りやエピソードの深掘りが行われます。その際に、自分のエピソードを絡めた説明ができない場合、「主体性を持って業務をしてこなかった」と判断されてしまうことがあります。
〈新井の一言〉
一次請けSIerに人気の職種にコンサルがあります。「キャリアアップのためにコンサルがやりたい」と答える人は多いですが、「なぜコンサルがやりたいのか」を説明できる人は意外と少ないです。
過去、コンサル職への転職に成功された人は、以下のように志望動機が明確かつその人にしか語れないものを持っています。
「SIerでは開発を成功させることはできるが、クライアントの成功のためには要件定義の前段階から関わる必要があると思った。そこで、◯◯を提案し実際に採用された。」
「要件定義の前の企画段階で進言したが、所属のSIerでは要件定義以上の業務に携われずSIerのビジネスモデルの限界を感じた。そのため、企画段階から入れるコンサルを志望した」
上記のように、想像上の課題だけではなく具体的なエピソードが出るまで深掘りが必要です。
市場評価と現職の年収は合ってないことが多い
近年では、「転職をして年収が200万上がった」「転職で年収が1,000万円になった」というケースも散見されます。しかし、一次請けのSIer出身の20代SEの場合、そこまで年収が上がらないことがあります。
理由としては、一次請けSIerの待遇は国内でも抜群であり、特に20代SEの場合には、残業代もつくため同年代に比べても年収が高くなりやすいという点があげられます。
転職前には、エージェントなどに相談しどのぐらいの年収幅になりそうなのか、を客観的に判断してもらうことが必要です。
〈新井の一言〉
「残業代で年収が高くなっている」というのは大手で働く人ほど気づきにくいです。そのため、待遇が抜群に良い一次請けSIerでは、年収で考えると身動きが取りづらくなります。
転職を考える際には、「自分が残業代でどのぐらい稼いでいるのか」「転職市場ではどのぐらいの年収が提示されるのか」などをエージェントに相談することから始めてみましょう。
まとめ
転職市場における、一次請けSIerの20代SEの弱点は経験値の低さです。しかし、開発の要件定義に携わる経験やIT全体の知見の深さなどから、非常に市場価値が高く様々なキャリアパスが考えられます。
市場でも数少ない希少な業務経験であるため、自身の業務経験を正しく理解し、正確に市場価値やより可能性のあるキャリアパスを提案できるエージェントに相談する必要があります。
コープラスでは、SIer出身者やITコンサル出身者などのIT人材の転職サポートを専門で行っております。経験年数も長く、企業と人材の両面を担当しているからこそ求人企業と転職者の双方にとって、ベストマッチな提案をすることが可能です。
一次請けSIerの20代SEで現職にお悩みであればぜひ一度コープラスにご相談ください。
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